ケアプランと、利用者・家族が知っておきたいこと
O-ネットでは5月10日(火)、ドーンセンターで第50回O-ネットセミナー『私らしく施設で暮らすために~ケアプランと、利用者・家族が知っておきたいこと~』を開催しました。ケアマネジャー(介護支援専門員)の藤本委扶子さんを講師に、特養を対象とした施設のケアプラン(施設サービス計画書)の意義と仕組みについて、事例を交えて学びました。直前に読売新聞で紹介されたこともあり参加者は75名と多数に。「将来に備えて知っておきたい」「家族のケアプランに疑問がある」「施設関係者として改めて確認しておきたい」など参加の動機はさまざまでしたが、テーマに高い関心が寄せられました。
ケアプランは主体的に生活するための道しるべ
介護保険でサービスを受ける人々が、自分に合った介護を受けながら、自分らしい生活を送れるようにするためのケアプラン。介護保険が始まって16年経つものの、利用者・家族のなかにはケアプランについてよく知らない人もみられます。とくに施設入居の場合、1日の決まった流れの中で共同生活を送っているため、自身のケアプランの存在が分かりにくく、作成も施設任せになりがちです。
「ケアプランは利用者のためのものであり、施設と利用者・家族が一緒になってつくるもの。“主体的な生活を送るための道しるべ”とも言えます。利用者の中には意思疎通が難しい人もいますが、自分の意思を伝え、選び、自分で決定できるということが、ひいては主体性を促し、目標をもって意欲的に生活していくことにもつながっていく。ケアプランは自立支援に欠かせないものなのです」と藤本さんは話します。
施設では介護職員など多数の専門職が利用者に関わりますが、「ケアプランは誰が関わっても利用者の意向を汲み取った適切なケアを提供するための“保証”となるもの。それだけにケアプランの意義と役割を利用者・家族はしっかり理解しておくことが大切です」
アセスメントやサービス担当者会議で率直に要望を
ケアプラン作成の流れは次のとおりです。
利用者の身体状況、利用者のニーズなどを把握するアセスメント(情報収集)を実施。内容を分析し、ケアマネジャーが原案を作成。原案をもとにサービス担当者会議(以下、会議と略)を開きます。この会議には、利用者・家族、ケアマネジャー、担当介護職員、栄養士、看護師、機能訓練指導員、生活相談員などが出席。利用者が望む暮らしに応えられるよう、専門職がチームケアで情報の共有・連携にあたります。そして会議での話し合いを踏まえてケマネジャーが原案を修正。ケアプランを完成させます。ケアプランの見直しは半年ごとに実施。状態変化があったときは半年以内でも会議を開いて見直しが行われます。
そうしたなか、利用者・家族に求められるのが、アセスメントや会議のときに、どんな介護や生活を望んでいるのか、生活習慣やこだわりなどを遠慮せずに伝えること。「“要望はべつにありません”と答える人が多いのが現状ですが、思い切って出してみることが大切です。選択肢の提供、代替策の検討などを通し、施設もできるだけ意向に沿うよう努めてくれるかもしれません」
利用者の中には認知症などによって思いが伝えられない人もいます。「介護が必要になる前から見学などで施設のことをよく知り、望む生活や介護を周りの人に伝えておきたい。エンディングノートに記しておくのもよいでしょう」
家族も利用者の人柄、生活歴、印象に残るエピソードなどの情報を伝えます。家族によってはケアプランの見直しの会議に参加せず、施設から送られてきたプランに押印して返送するだけの人もいますが、押印はそのプランを認めるということ。その点をよく認識しておく必要があります。
家族として加えて気をつけたいのが、利用者の主体性を削ぐような要望は控えること。「例えば転倒しないように車椅子にベルトをつけてほしいといった要望は、利用者が真に望むこととは言えません。施設も身体拘束は禁止されていることをきちんと説明し、家族に納得してもらえる対応ができるよう努めなければなりません」
ケアプランに欠かせない継続的な把握とモニタリング
一方、施設に望まれるのは、利用者・家族の要望を引き出し、それを活かしていくこと。また作成したケアプランが実行され効果を上げているかを継続的に把握しモニタリング(評価)することも大切です。
「とくに介護職員は利用者に最も関わっているだけに日々チェックを行い、ケアプランに上げた項目の中で達成できたもの、継続するもの、見直しが必要なものなど、こまめにケアマネジャーに伝え、連携を取ることが求められます。また、ケアマネジャーはプラン実行の要として、職員や利用者・家族と連携を取りながら、プランの評価を毎月行わなければなりません」
いずれにしても利用者・家族もケアプランに関心を持ち、プラン作成に関わっていくこと。主体的な施設生活はそこから始まると言えそうです。