令和2年度「キリン・地域のちから応援事業」
第60 回O-ネットセミナー( 設立20 周年記念講演会)
『外国人介護スタッフの受入れと支援』
【O-ネット通信117号記事より】
本気なら、国も社会も「覚悟」必要
Oーネットでは11月14日、設立20周年記念講演会(第60回Oーネットセミナー)をドーンセンターで開催しま
した。『外国人介護スタッフの受入れと支援』をテーマに、前半は基調講演、後半はシンポジウムを行いました。講演会は「キリン・地域のちから応援事業」に昨年応募し、キリン福祉財団から助成を受けた企画。コロナ禍によって外国人の入国がままならないこと、国内の感染者も急増していることなどにより、参加者は30人と少なめでした。しかし日独の現状比較を通し、我が国の今後を考えるうえで非常に有意義な講演会となりました。【基調講演】ドイツの介護動向と日本のこれから
日本の福祉研究者ので、ドイツを研究する人は数人しかいません。しかしドイツは、介護保険制度、高齢化率(21・7%)・人口(8315万人)・経済規模等、日本とよく似ている。比較研究の対象国として、私はここ十数年、毎年渡独しその動向を見てきました。
ドイツでも介護職は不人気で、今や外国人なくして介護業界は成り立たない状況です。私はこれまで40施設ほど視察してきましたが、介護職員の3割以上は外国人。7割に上る施設もある。出身地も多様で東欧諸国やトルコの他、北アフリアカやフィリピンなどアジアの人々も。永住権さらには市民権を持つ人も多く、管理職も少なくありません。
ドイツの介護保険では在宅介護の場合、現金給付も選択できます。その在宅介護を支えているのが、住み込みの家政婦兼介護員として働いている東欧から来人々です。施設介護なら介護保険を利用しても月30万円は自己負担が必要ですが、在宅介護で住み込みの家政婦を雇えば月20万円前後で済む。要介護者の年金と介護保険の現金給付で工面できる金額のため、需要が増しています。
外国人労働者を積極的に受入れ、権利保障も整うドイツでは、今では雇う側も違和感なく、働く側も疎外感が少ないのが現状。加えて「ドイツ語や歴史文化を学ぶ600時間のプログラムを国が義務付け、大半を公費で補助する語学支援」や「長期休暇が取れ、一時帰国もしやすい労働環境」なども外国人には魅力です。
このようにドイツがそれなりの「覚悟」を持って受入れ策を進めているのに対し、日本はまだ「労働力」としてしか捉えていない。賃金が魅力なのは今のうちだけで、日本人に選ばれない職場が外国人に選ばれるはずがない。まずは日本人が定着する職場環境を早急に整えることのほうが大事です。
「共生」の真の意味を私たち皆が理解することも必要です。例えば、母国の祭日に外国人が騒いでいても黙っていられる。そうしたことができる社会にならないと、外国人の確保・定着は難しいでしょう。【シンポジウム】外国人スタッフを迎えて
〜施設でできること、 地域ができること〜4人のシンポジストが3つのテーマについて意見を交わしました。
日本語学習支援について、「現状では外国人本人と受入れ施設に丸投げされ、日本人職員やボランティアで支えている状態」と結城教授が指摘。地域で外国人支援に携わる山本愛とよなか国際交流協会事務局次長は「例えばチラシを見て買い物に行き、調理をして…といった生活行為を一緒に行う。そんな支援方法で〈使える〉日本語にしていく工夫も必要だ」と述べました。
外国人労働者が抱える悩みについては、さまざまな事例が挙げられました。外国人を積極的に雇用している晋栄福祉会の濵田和則理事長は「日本語や仕事以外にも、結婚・妊娠、本国で暮らす親の病気、仕送りのことなど外国人職員が抱える悩みは多い。気軽に相談でき柔軟に対応できる環境を法人が整えることが大切」と伝えました。
外国人を社会で受け入れていくにはNPOや地域にも対応が求められます。行政書士としてビザの手続き等にも携わる小林弘法O―ネット理事は「O―ネットではこれまで施設と利用者の橋渡しを担ってきたが、今後は外国人職員を含めた橋渡しにも取り組んでいきたい」と抱負を述べました。
山本さんは地域の防災訓練に技能実習生たちが参加した事例を紹介。「若くて元気な彼らがバケツリレーで圧勝し、住民たちが彼らを知るきっかけとなった。そこから頼り・頼られ…といった交わりも生まれる」と話しました。
一方、結城さんは「私たちが閉鎖的な島国根性を変えられるかがカギだ。日本人の価値観を押し付けてはダメ。それができないと外国人に〈選ばれる国〉にはならず、欧州や中国との人材獲得競争でも負ける」と厳しい提言も。「確かにこのままだと〈選ばれない国〉かも。だからこそ今、風が吹くうちに乗り越えるよう努めたい」と山本さん。「外国の人たちの権利を保障するよう声を挙げ、法律・制度を変えていくことも、私たちに課せられた役割です」
日時:2020年11月14日(土)13時~16時30分(開場 12時45分)
会場:ドーンセンター5階・特別会議室(チラシ裏面地図参照)
定員:60人(申込先着順)
参加費:一般 1,000円、会員無料
【基調講演】ドイツの介護動向と日本のこれから
講師:結城康博 淑徳大学教授
社会福祉士・介護支援専門員等として介護分野で勤務ののち現職。
専門は社会保障論・社会福祉学。
社会保障審議会介護保険部会委員等を歴任。
毎年渡独し介護動向にも詳しい。
『介護職がいなくなる ケアの現場で何が起きているのか』
(岩波ブックレット、2019 年)など著書多数。
【シンポジウム】外国人介護スタッフを迎えて
~施設でできること、地域ができること~
結城康博・淑徳大学教授(研究者の立場から)
濵田和則・晋栄福祉会理事長(介護施設の立場から)
山本 愛・とよなか国際交流協会事務局次長(地域支援の立場から)
小林弘法・ O-ネット理事、行政書士(O-ネット及び登録支援機関の立場から)
三木秀夫・ O-ネット代表理事、関西国際交流団体協議会代表理事(コーディネーター)
プログラム
13時00分~13時15分 開会挨拶 |
13時15分~14時45分 基調講演 |
14時45分~15時00分 休憩 |
15時00分~16時30分 シンポジウム |
16時30分 終了 |
【終了しました】申込方法:下記の手順でお願いします
(1)Web でお申し込みの場合
下記申込フォームに必要事項を入力し、送信してください
<申込フォーム>
(2)FAX・郵便でお申し込みの場合
下記の申込書をダウンロードし、事務局へお送りください。
<お申込書>
下記リンクをクリックして、チラシ裏面申込書をダウンロードしてください。
20周年記念講演会 (PDF)
(3)電話でお申し込みの場合
水・土・日・祝を除く10:00 ~ 17:00 にお願いします。
主催・問合せ先
介護保険市民オンブズマン機構大阪(O-ネット) 職員研修実行委員会事務局
TEL06-6975-5221 FAX06-6975-5223
〒537-0025 大阪市東成区中道3-2-34
助成・公益財団法人 キリン福祉財団