10月26日、大阪労働者福祉財団の助成を受け、講演会『家族の“施設入居〟を考えるとき』を開催しました。参加者は85名(関係者9名含む)。前半は「施設選びで知っておきたいこと」をテーマに堀川世津子事務局長が講演。後半は体験談「我が家の場合」。家族の施設入居に際し、経緯や留意点などについて3人のオンブズマンが語りました。
今後のことも考えて、居宅介護支援事業所を選ぶ
父は現在90歳。個室ユニット型特養に入居して約4年半になります。入居時は要介護4で寝たきりの状態でしたが、現在は要介護2になりました。父は私と2人で元気に暮らしてきましたが、6年前、腰椎の圧迫骨折による入院を機に介護保険を申請。居宅介護支援事業所(以下、事業所)は、自宅近くで特養も運営しているところに依頼しました。今後ショートステイの利用や施設入居の可能性も考え、こまめに通えるところがよいと判断したからです。運営母体はどんなところか、職員教育や理念がしっかりしているか、いろんなことを相談しやすいかなども考慮しました。
父はその後、肋骨の骨折で入院。驚異的に回復し在宅生活を続けていましたが、次に右大腿骨頚部骨折で入院。認知症も進み在宅生活は困難な状態になりました。
介護離職も考えた私でしたが、定年まであと1年だったこともあり、担当のケアマネジャーさんが仕事を続けられるよう尽力して下さいました。その結果、父は退院後、事業所の系列の現在の施設に長期のショートステイを経て入居することができました。
施設入居というと、自宅で介護できないことに負い目を感じる家族もあるかと思います。私もこれでよかったのかと揺れる気持ちもありましたが、入居後父は機嫌よく暮らし、今では施設が自分の居場所になっています。距離を置くことで互いの関係性もよくなりました。今後どのように終末を迎えるか分かりませんが、願わくば穏やかなエンディングであるようにと祈っています。
気づきや要望を施設に伝え、対話重ねる大切さ実感
93歳まで一人住まいをしていた父は腰を痛め入院。入院先の相談室で退院後の相談をしたところ介護付有料老人ホームを紹介してもらい入居しました。父は乗り気ではありませんでしたが、本人はもちろん家族としても施設側に思いや願いを伝えることで父にとって快適な居場所になるのではないかと施設と向き合うよう心掛けました。入居後施設側に改善を求める場面では、単なるクレームではなく、父の入居する施設が家族にとって自慢できる施設であってほしいという思いで施設と話をしていったところ、車いすのブレーキの不備に気づけなかった時は、すぐに車いす安全点検担当係を設置、職員の不注意が目立った時はヒヤリハットの研修を実施、誤薬があった時は複数職員での確認の義務付けなど、どの事例も再発防止のためにできることを真摯に取り組んでもらえました。
また、父の誕生日には、施設側が用意した誕生日会ではなく、好きなお寿司を食べに行きたいと希望したところ職員さんの力添えで実施でき、その後施設の誕生日会のあり方を見直してもらえ、個人の願いが他の利用者さん達の願いにもつながりました。
施設側にはたくさんの思いを伝えてきましたが、施設側からも家族と会話を重ねていくことの大切さを実感したと言ってもらえました。
入居に関して様々な迷いもありましたが、今は亡き父の施設での生活は意味があったと感じるし、その経験が現在のオンブズマン活動にも繋がっていると思います。
人のいる安心感が魅力―意向を尊重し施設入居に
「何があっても家で暮らす」と強く思っていた84歳の夫の母は、義父が亡くなった後も一人暮らしを続けていました。2年前、入浴中に転倒。心配して様子を見に行った夫が浴室で発見。大腿骨骨折で入院・手術となりました。術後は順調で、嫌だった病院食も「歩きたい一心」で少しずつ食べだし、退院後リハビリのため老健に。そこでの生活が、「24時間人のいる安心感」と「声を掛けてくれる友達がいる心強さ」につながったのか、3ヶ月もするとすっかり慣れ、「ずーとここにおりたい」となりました。帰宅の準備をしていましたが、老健のケアマネジャーの意見もあり、他の入居施設を探すことに。夫と私にとっては思いもかけない展開で驚きましたが施設探しを進めていきました。
まず情報を得るためにケアマネジャーに相談。その後はいろいろな施設を実際に見学。訪問すると雰囲気や職員・利用者の様子がよくわかり、義母に一番合っているところも見えてくるようになり、現在のケアハウスに入居を決めました。
入居後2ヶ月もするとケアハウスの職員にも慣れ、外出しても「ケアハウスに戻りたい」というほどになりました。家族としては、週2~3回訪問し、外出もしています。気づいたことはその都度施設に相談するようにしています。
義母の気持ちに沿って臨んだ結果、施設入居となりましたが、義母にとってケアハウスはベストではないがベターな選択だったと思っています。