アンガーマネジメントに高い関心
11月29日、O―ネットでは、ドーンセンターで「2014年度施設内虐待を防ぐための職員研修」を開きました。企画・運営は施設とO―ネットの関係者でつくる職員研修実行委員会。当日は、柴尾慶次・日本高齢者虐待防止学会理事で大阪緑ヶ丘(老健)事務長の講義「高齢者虐待の背景を知る」のほか、劇団O―ネットが「市民感覚とのズレを知ろう」と題し、虐待につながる事例を劇で披露。桑野弘加寿苑施設長(特養)と大領地域の家であい(グループホーム)の介護職員・中峯瞳さんが虐待防止の実践報告を行いました。また、社会保険労務士でビジネス・パートナー・オフィス代表の桑野里美さんを講師に、ワークショップ「アンガーマネジメント」も実施しました。受講者は77人。特養や有料老人ホーム・グループホームの施設長・生活相談員・介護職員が多数参加しました。
自分を客観視する
昨年度は朝日厚生文化事業団「高齢者への虐待防止プロジェクト」の助成を受けて開催したこの研修。好評だったため、今年度はO―ネットの自主事業として実施しましたが、開催の1か月以上前、10 月上旬には早くも定員に到達。O―ネットならではのユニークなプログラムが関心を集めました。
なかでも受講者の人気が高ったのが「アンガーマネジメント~イライラする自分を嫌いにならないために~」。アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで始まった、怒りの感情に上手に付き合うための心理教育。ビジネスマンや弁護士・医師・スポーツ選手などさまざまな専門的立場の人が、より良い人間関係を築くために学んでいます。介護現場でも自分の感情をうまくコントロールすることが虐待防止の一方策となると考え、今回の研修で新たに導入しました。
研修では講師の桑野さんが、アンガーマネジメントとは「怒らないことではない。怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らないようにすること」と定義。「私たちは怒ったとき、その原因を他者のせいにしがちですが、怒りの正体は他者や出来事やモノではなく、自分の願望・欲求を象徴する“こうあるべき„という考え方にある。しかし“べき„の判断基準は人それぞれ。そのため自分の基準と現実の間にギャップが生じることも多く、それが怒りとなるのです」
怒りの感情のピークは出来事があってから長くて6秒ぐらいのもの。攻撃するのを避けるため、6秒間じっと自分の掌を見つめたり場所をいったん離れたりして怒りが静まるのを「待つ」のも対人関係には有効な手段です。
「怒ることで、誰かを変えられるでしょうか? 変えられるのは自分と未来だけなのでは?」と桑野さん。それだけに自分を客観視するトレーニングも大切です。「何に怒ったのか毎日記録してみたり、怒りの強度を点数化してみたり…。あるいは怒ることで、相手の態度・対応を変えるなど、相手をコントロールできて、かつ非常に重要な事柄なのか…を考えてみたりすることで“自分の怒りはそれほど大きなことや重要なことではない„と気づくことも少なくありません」
一般に、怒りは子ども・配偶者・利用者・部下など自分の身近な「コントロールできる」と思える人に対して向けられがち。また、「伝染しやすい」という性質もあります。怒りの連鎖を断ち切るためにも、アンガーマネジメントは介護現場に広めていきたい対応策の一つかもしれません。