3/25 Oーネットは設立20周年を迎えました

2000年3月25日に設立したOーネット。今年20歳を迎えました。1990年代に成立したNPO法と介護保険法。21世紀という新時代を象徴するこれらの法律の趣旨を具現化する一つの試みとして誕生した活動でした。最初の10年間は活動の土台をつくり成長させました。その後の10年間は基盤を強固なものとし活動を深化させました。介護保険制度や社会の変化とともに、Oーネットの20年をふり返ります。(O-ネット通信115号掲載/2020.6.11発行

制度への期待とともに誕生

1970年代から課題となっていた高齢者の介護。単に「家庭内の問題」ではなく「社会問題」としてとらえ、社会全体で支え合っていこう。家族頼みの介護からの脱却をめざそう――。こうした趣旨のもと「介護の社会化」をめざして誕生した介護保険制度は、従来の社会福祉の概念を変える画期的なものでした。Oーネットはその制度の誕生前夜、社会の期待と熱気が高まる中で産声を上げました。
それまで閉ざされた世界だった介護施設に、一般市民がオンブズマンとして訪問し、利用者の本音に耳を傾ける。
「集団処遇から個別対応へ」「利用者本位のケアを」と、制度開始以降、施設介護のあり方も転換が求められていただけに、市民の視点で気づきを伝えるオンブズマンの活動は大いに注目を集めました。

制度・社会状況が変化して

しかし度重なる制度見直し、サービスの縮小や負担増により、介護保険は徐々に複雑で魅力に欠けるものになってきています。
一方で社会状況も大きく変化しました。非正規雇用の増加、年金支給額の減少などにより、60歳を過ぎても働く人が男女ともに増加し、ボランティア人口の減少につながっています。
60代は、身近になってきた介護を「我がこと」としてとらえ、培ってきた社会経験を活かしつつ、介護に関する知識・情報を吸収できる「オンブズマン適齢期」。それだけにそうした人々の参加が難しいのは痛手です。
半面、オンブズマン活動の質は、蓄積してきたノウハウを活かしながら向上し、深化してきました。意思疎通が困難な利用者も多いなか、注意深い観察から状況を汲み取り、施設に敬意を示しつつ気づきを伝えるオンブズマンたちのそのの真摯な姿勢は、施設の厚い信頼につながっています。

常に「Oーネットらしさ」追求

介護の質向上」をコンセプトに活動してきたOーネット。オンブズマン活動のほかオンブズマン養成講座、介護職員研修、講演会、本の発行の5事業を「Oーネットらしさ」にこだわりながら進めてきました。それができたのも、確固たる趣旨のもと各事業を有機的に関連させてきたからでしょう。
培ってきたオンブズマン活動の視点を生かし、昨年は新事業として、グループホーム外部評価事業を開始。順調なスタートを切りました。これからは介護施設で働く外国人介護職員の支援にも関わっていく予定です。
「入居してよかった」と思える施設を増やすため、施設の人々とも連携し、今後もOーネットらしい事業を展開していきます。

数字で見る20 年Oーネット6つの事業(2000~2019 年度)

①オンブズマン活動
活動施設延べ 98 か所 オンブズマン延べ467 人

②オンブズマン養成講座
開催回数 23 回 受講者 711 人

③介護職員研修
開催回数 30 回 受講者 1,550 人

④講演会
開催回数 86 回 参加者 6,988 人 ※参加人数把握分

⑤本の発行
発行図書42 冊 売上額 8,379,781 円

⑥グループホーム外部評価
評価件数29 件 ※コロナ禍で4件は訪問延期

自負心培う「市民発」の活動に成長

副代表理事 山田裕子

豊かで多様な社会を構築していくには、NPOの役割が今後欠かせないものになる――。そう信じて大阪NPOセンターで1990年代からNPOの立ち上げや支援に関わっていました。
そんな折、Oーネット設立発起人の1人から「介護保険がめざす『市民参加』のコンセプトを社会に根付かせるにはNPO法人化が必須だから」と参画を促されました。
「告発型でなく橋渡し役」のスタイルは想定以上に社会的インパクトがあり、はじめは好奇心からの参加でも多くの人が「これは自分がやらなければ」と自負心が生まれる市民発の活動となりました。
介護保険制度が始まってから20年、社会状況は変化しましたが「良い社会」をつくるのがNPOの使命です。市民との共感・共生に基づき新しいアイデアを社会化する存在でなければならないと思っています。

 

「介護の質向上」の一役担い、さらに前進を

副代表理事 水上義博

2000年の介護保険法の施行に合わせ、施設介護の質的向上を目的に設立したOーネット。介護オンブズマン活動や、その活動から見えてきたことを事例集などの本にして発行することにより、課題の社会化を図り、介護保険事業の進展に一定の役割を果たしてきたと思います。
この20年間を事業会計の累計で見ると、収入は事業収入および会費・助成金・寄付金など2億6600万円、支出は事業経費・管理費で2億6000万円となり、600万円の黒字を維持してきました。
設立時は、オンブズマンの希望者が多くて、養成講座の受講生を選考するのに苦労しましたが、近年は希望者を募るのに苦労しており、時の流れを感じます。また、新型コロナウイルス禍の各事業への影響も危惧しています。昨年から開始した外部評価事業とともに、基幹事業であるオンブズマン派遣事業の引き続きの前進を…と願っています。