事例総件数397件、平均改善率84%
「外出」や「楽しみ」と、「拘束」事例が増加
2017年4月から2018年3月まで、約80名の市民オンブズマンが特養・介護付き有料老人ホーム・介護型ケアハウス・サ高住・グループホーム・養護老人ホームなど全43施設で活動した記録。施設に伝えた事例総件数397件(2016年度411件)の中から、主な事例をソフト面・ハード面ともに抜粋し、分析しています。平均改善率は84%(2016年度に同じ)でした。
ソフト面には「排泄」「食事」「入浴」の三大介護のほか、「楽しみ」「リハビリ」「拘束」など14項目があります。2017年度に件数が伸びた項目には「外出」「楽しみ」、「拘束」がありました。特に「拘束」も事例件数は8件と少ないながら、2016年度4件から倍増しました。増加の背景には「人手が足りずに職員が多忙で、重度化した利用者の見守りを徹底できない」という、施設の現状が窺えます。
ハード面(生活環境)は、「居室」と「共用空間」2項目からなります。事例には「居室のケコールの不備」にオンブズマンが気づいた件がありました。職員の人手不足がいわれるいまこそ、ケアコールの全床設置は、施設に徹底してもらいたい課題です。
事例1「お風呂で男の人に身体を洗われるのは嫌」
女性利用者の声をオンブズマンが伝えました。せっかくのリラックスタイムでもある入浴が、異性の介助で嫌悪に変わってしまいます。同性介助の希望に対し、施設は利用者の気持ちを理解しながらも「職員は男性が多く、人手不足と経費の制約から現状では困難」という回答でした。当該利用者の入浴日だけでも対応策を望みたいところです。
事例2「新聞をたまに持ってきてくれるが古いものばかり」
「楽しみ」について、オンブズマンが利用者からさまざまな要望を聴き取った一つです。新聞には、世の中の動き新しいを知る楽しみがあります。施設はよかれと思ってしたことでも、古新聞の情報では利用者の社会的関心や知的欲求は満たされません。利用者の求めに応じ、施設は館内のデイサービスから当日の新聞を譲り受け、午後早めに提供するようになりました。
事例3「車椅子に座面からずり落ちそうに座っている利用者がいた」
車椅子に座っている利用者の姿勢が崩れていることにオンブズマンが気づき、伝えました。施設は利用者の身体状況に合ったフィッテングやシーティングを行い、車椅子を利用者の身体に合うサイズに変え、姿勢保持にリハビリ用のクッションも使うようになりました。座位姿勢が整うようになった利用者は、表情も明るくなりました。