改善率は64.0% 前回に引き続き低い傾向
個別性の確保が課題

2026年3月発行、A4判37ページ、500円
今期(2024 年10 月~25 年9 月)の苦情要望は全体で136 件寄せられ、前回と比較して項目ごと
の件数の増減にばらつきが見られたものの、利用者の生活全般にわたる多様な声が引き続き確認さ
れました。
改善率は前回63.8%から今回64.0%とほぼ横這いであり、コロナ前に比べると低い水準が続い
ています(2017 年度84%、2018 年度89%)。
この理由としては、オンブズマン活動が基本月1 回となり、訪問先によっては毎回異なるフロアを回り、施設の対応を継続的に確認するのが難しくなったほか、人員面のやりくりや職員間での共有化など、施設の対応の遅れが考えられます。
項目別に改善率を見ていくと、「排泄」「入浴」「リハビリ」「身だしなみ」「その他」「居室」「共用空間」では、いずれも70%以上と高い改善が見られました。
このうち、「排泄」「入浴」「リハビリ」「その他」は、すべて利用者自身から発せられた要望をオンブズマンが施設に橋渡ししたものでした。
いずれもパーソナルな内容であり、言うことにためらいを感じる利用者もいる中、オンブズマンが利用者の気持ちをしっかり傾聴し、それを受け止めた施設が真摯に対処した結果と言えます。
一方、「身だしなみ」「居室」「共用空間」はオンブズマンの観察による気づきが大半で、施設に伝えた内容が迅速な改善につながった事例が多数見られました。
オンブズマンの指摘により、利用者が日々を過ごす空間や身の回りが整えられることで、快適な生活が確保されていることがうかがえます。逆に、「食事」「外出」「コミュニケーション」は改善が進まず、いずれも前回から大きく改善率を落とす結果となりました。
特に「食事」は、件数としては21 件と全16 項目中最多であったものの、改善率は47.6%にとどまりました。
内容としては、食事の好みに関する要望が約半数を占めました。
利用者にとって食事は生活の中の楽しみやQOLを支える重要な要素です。
安全性や嚥下機能への配慮が欠かせない一方で、本人の長年の習慣や好みを尊重する工夫が求められます。
その他、昨今の食材費の高騰を受けた事例も散見され、今後、食事やおやつの提供内容に制約が生じたり、自己負担が求められたりすることも予想されます。
「外出」では具体的な希望が多く寄せられたものの、職員体制が十分でない、家族の協力が得られないなど、実現が難しいケースが目立ち、改善率も33.3%と低調でした。
しかしながら、代替手段の提示や、利用者の気持ちに寄り添う関わりが一定の効果を示した事例もあり、柔軟な対応の重要性が示されています。
「コミュニケーション」では、職員の言動や利用者同士の関係性に関する相談が寄せられました。
改善率は37.5%で、特に職員の対応に関する未改善事例が残った点は課題です。オンブズマンからの提案が十分に活かされなかったケースもあり、施設内でのさらなる意識共有や指導の徹底が求められます。
コロナ禍以降ますます人手不足が続く中、施設は懸命に努力を重ねているものの、総じて介護の質の低下が否めない状況となっています。
「食事」「外出」等の項目で表れたように、特に「個別ケア」の後退により、過去の画一的なケアに逆戻りしたかのような場面も見られます。
こうした状況だからこそ、利用者の声を丁寧に拾い上げ、第三者として客観的な立場から施設に気づきを与えるオンブズマンの役割が、より一層重要になってくるだろうと思われます。













